6 ハタ先生

”現代サーカス”って 、、、もっとしっくりくる表現があるんじゃないかと思ったりもするが、どんなカテゴリなのかは大体わかる。大道芸、アーティスティック・サーカス、そんな理解だ。後ろにいるイタリア人カップルもそれに関係しているようだが、こんな山あいで何をしているんだろう?と不思議なシチュエーションではある。

「わかばちゃんよ、付いてきてもろたけど現代サーカスは明日でも見られるし、一旦、のぶゑおばちゃんのところにスーツケースをおいてくるんとちょっとゆっくりしたらどうな。俺はこのお二人さんをそこにお連れするけん」

つよっさん、私がちょっと疲れているのを何で感づいたのだろう。朝5時起きのはずが寝過ごしてしまって、何も食べずに羽田から高松に飛んだ。いこいの中華そばでおなかを満たすと逆にくたびれてきたところだった。わかばは、のぶゑばあちゃんから預かった鍵を持って藤本の家に向かった。旧小学校からすぐのこじんまりとした平屋の家。ガラガラと玄関を開けると、きれいに整頓された居間と台所が見える。適当に窓を開けると涼風が部屋の空気を入れ替えてくれて爽やかで、どうやらエアコンは要らない感じだ。居間にある革張りの白いソファに腰かけると、大きな掃き出しの窓から旧小学校やその右側には深藍色の満々と水を湛えたダム湖畔の水面、その背景にはみずみずしい青葉の山々が迫っている。ひじ掛けに軽く頭を預けてその景色を眺めているうちにうとうと瞼が重くなってきた。