10 えいじ

上西小学校。、インターネット百科事典によると、

1875明治の内場小学校の開設に始まり、1901明治34年香山尋常小学校、1941昭和16年の東山国民学校、西山国民学校、香山国民学校と改称され、1971昭和46年に香山・東山・西山の3教場総合されて、上西小学校が発足した。2015年に塩江小学校と安原小学校との統合により廃校となった、とのこと。

廃校から12年が経ち、「学校」という施設から、東京などの都会から移住してきた若者たちの活動拠点にもなっている。上西小学校周辺から高松空港までは14キロ、車で20分。飛行場までの経路上に信号のある交差点はつ。3回行くとそのうち1回ぐらいはノンストップで空港の駐車場に到着だ。

パソナが本社機能を分散させると白羽の矢を当てた淡路島、葉っぱビジネスや「株式会社上勝開拓団」で名をはせた上勝町より東京へのアクセスは実はいい。東京への始発便は7時40分前後なので、朝6時に起きて11時に新橋のうどん県アンテナショップの店頭に前日に掘った”炭谷ごんぼ”を並べることは容易だ。京阪神方面も一緒で、自家用車やAIロボットの車掌が乗るバスで空港まで行けば、空港リムジンバスとJRもしくは直行の高速バスで10時半にはユニバーサルスタジオジャパンのゲートの前だ。

そんなアクセス環境に加えて、教育環境はといえば小中一貫教育ともいえる統合校には、児童生徒の通学の足となる通学バスが利用できる。家の軒先まで送迎とはいかないものの、統合する前の通学よりははるかに便利だ。

ロボット車掌のエイジのキャラクターのモデルになった人がいる。えいじ。村にいるロボットは誰かのキャラクター、性格、話し方、素振りや振る舞いをAIで学習してそのロボットになる。村人からのアイデアでそうなった。その方がロボットにとっても住みやすいだろうし、村人たちもすぐ親近感が持てると。

そのえいじんちはのぶゑばあちゃんの家からはるかに南。やまあいではない、山腹だ。そこから中学校まで自転車で通っていた。距離にして12キロ、標高差は何と550メートル。往路は、自転車の置いている県道わきまで母親の運転するカブの背中につかまり、自転車に飛び乗るとそれはほとんど下り坂なので学校まで30分。しかし帰りはというと、来た道を帰るわけだし、おまけに練習時間の長い野球部に入っていたので帰途につくのが6時とかだ。夏の総体前だとボールが見えなくなるまで練習するから7時を過ぎる。通学途中の”買い食い”はダメということにはなっているがそんなこと言ってられない。帰路にある23軒あった雑貨屋のどこかでドーナツやイカの串足といった腹の足しになるものを片手にひたすらペダルをこぐ、漕ぐ。しかし最後2キロは自転車をおいて、真っ暗な山道を懐中電灯片手に坂道を歩くというか、登る。9時半。次の朝、野球の朝練があるとなったら、6時起きでギリギリだ。グランドのすぐ隣に家があるキャプテンの思うように練習時間が決められるからたまったもんじゃない。一日はもちろん24時間だけれど、人によってその24時間はだいぶ違う使い方になる。

このえいじの24時間と不思議リンクするのが、都心に通勤通学するものすごく多くの人々。何百万人といるのだろう。えいじと違うのは、彼ら彼女らが行きと帰りにかかる時間が同じということ。せめて帰りは特急指定席を買い求めて座れるぐらいだ。 

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